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藤岡みなみ&ザ・モローンズ「脱水少女」
作詞:藤岡みなみ/作曲&編曲:ヒロヒロヤ

タレントさんがボーカルを務めるスリーピースバンドというイメージ、それが藤岡みなみ&ザ・モローンズへのファーストインプレッションでした。ボーカルを務める藤岡みなみさんのことは、以前から名前だけは存じていましたが、アーティスト活動を通じて、初めてちゃんと認識した感じです。

藤岡みなみさんは、1988年生まれ。テレビ、執筆、音楽などマルチに活躍するタレントです。タレント業と並行して、以前から音楽活動も積極的に行っていました。このバンドを組まれた経緯ですが、2009年から所属していたユニット、PANDA 1/2を2012年に卒業。その後、PANDA 1/2のサポートをしていたザ・モローンズの二人(リーダーで漫画家兼マルチプレイヤーのヒロヒロヤさんと、ギタリストのネロさん)と共に、3ピースバンド藤岡みなみ&ザ・モローンズを結成、2013年東京・高円寺から活動がスタートします。ジャンルとしては、ピアノが映えるメロディアスな正統派ロックナンバーが多い印象。ちょっと気だるい雰囲気の藤岡さんのボーカルが、曲に絡みつく感じです。

今回、紹介するのは「脱水少女」という作品。簡単に内容を要約すると、漠然と何かがやりたいけど出来ない一人の少女が主人公。身体は何かを欲してるにも関わらず何も出来ない。片想いをしている相手が部活で頑張っている姿を見て、色々と頭では考えながらも、羨ましいと思うだけで、結局、最後まで何も出来ないという物語です。焦燥感を掻き立てられるようなサウンドは、何かをしなければならないけど、何も出来ない自分への焦りのようにも感じられます。

キーワードとして『水』という単語が出てくるのですが、これは夢や目標のことを指しているのではないかなと思いました。学生時代に感じる漠然とした、「自分はこれから何をすれば良いのだろうか」という想いが、この曲には詰まっています。ポジティブな思考から理想だけを言えば、「何かやりたいことを見つけて、青春をかけて全力で打ち込めばいい」という意見になるとは思いますが、実際問題、そんなに器用に立ち回れる人間ばかりではないよなと。

汗だくのシンデレラはからから空回り
涙も蒸発して さかなも泳げないね
あなたが貸してくれたMD聴いたよ
なんでこんなに染み込んでいくのかしら

はてしない片思い それでも道はない
なにかになりたくて なににもなれずにいる
あなたの好きな小説 図書館で借りた
それしかやることがないから

どんなに涙が蒸発して、喉が渇いて水が欲しくても、水分を補給する方法というのは、自分で探すしかないのかなと思います。あくまで周りの人間はきっかけを与えるだけで、考えるのも、行動を起こすのも、結局のところ最後は自分の意思なんだろうなと。

泣き虫のスーパーマン もてもてもてまくり
流した汗たちがグラウンドをかためてく
わたしはそれを見てる ためいきついてる
なにも知らずにもらい泣きとかしてる

はてしない夏休み それでも道はない
なにかになりたくて なににもなりたくない
ラジオをつけて消して 夜の終わりを待ってる
やることがないから

片想いの相手は、部活の試合で負けてしまっても、涙や汗でグラウンドを固めることが出来るくらいに十分な水分を補給出来ていて、自身で納得&満足出来る人生を送っている。それに対して自分は、その打ち込む姿を見ることしか出来ずに、ため息をつきながら、もらい泣きして、結局、何をすれば良いのか分からないので、時間潰しをしながら夜が終わるのを待つ。この二つのフレーズの対比に、やりきれない想いが凝縮されていると思います。

あともう一つ、今回のMVを見て気になったのは、ボーカルの藤岡さんって何歳だったっけな?ということ。女子高生の役で出演されていますが、実は27歳の時の作品です。見た目が若く見えるので、そんなに違和感はないのですが、「27歳の女性に女子高生のコスプレをさせるのはどうなんだ、普通に歌わせてあげて欲しい」というファンからの意見も、周りからは一部あったみたいです。ただ藤岡さん自身が本人のブログで語られていましたが、現役の高校生と共演するのは恥ずかしいけど、久々に制服を着れたのでノリノリで楽しかったとのこと。学生時代の心の葛藤がテーマの曲だけに、映像スタッフの判断で、敢えてこの演出を選んだのかもしれませんけどね。歌詞の結末とは異なり、このMVの主人公の女の子は、最後は部活で汗を流すことに対する喜びを感じられるようになり、満面の笑みを見せるようになりました。果たして歌詞の中の主人公は、同じような結末をたどることは出来るのでしょうか?

ボーカルの藤岡みなみさんは、2017年に結婚され、その後、出産。2021年05月現在、音楽活動自体は休止中です。元々、ライティング能力が高く、文章に対する切り口やエッセイの着眼点などが面白い方なので、自ら作詞をしつつ、いつの日にかボーカリストとして復帰されることを、待ち望んでみたいなと思います。

【レーダーチャート】

ボーカル:16
メロディ:18
歌詞:19
アレンジ:18
個性:17

TOTAL:88

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