CDを買う時、皆様はどこで購入されますか?今はストリーミングサービスなどが充実しているので、そもそも最初から買わないという方もいるとは思いますが、実際に買う層を対象にアンケートを取ったとしたら、「ライブなどの販促イベントで買う」「インターネットで買う」という意見が、大多数を占める気がします。
イベントやライブで買うのは、特典やサインが付くというメリットがあります。ネットで購入する場合のメリットとしては、音楽については人それぞれ、多種多様な趣味ということもあり、もし音源として自分の欲する作品を手に入れるとなると、ピンポイントで見つける必要があるので、検索などをして購入してしまうのが、一番手っ取り早いと思うからです。(ネットからの注文で、店舗取り置きなどをしてもらうケースも同様です。)
ただ20年以上前は、そうも言ってはいられませんでした。インターネット通販という概念が全くなく、ネットが普及し始めた当初などは、『「ネットで物を買う」=「詐欺なんじゃないか」』なんていう噂すら出回りました。今でこそ笑い話にしか聞こえませんが、未知なるものに対する恐怖と、実際にセキュリティがしっかりしていなかった時代は、詐欺も横行していました。
信頼の置ける仲介業者が間に入り、SSLや二段階認証などが普及した今でこそ、そういった案件も少なくなりましたが、創世記のヤフオクなどでは、完全な個人間取引だった為、詐欺が横行していましたし、自分も金を騙し取られたことがあります(笑)。(現金のやりとりを業者が仲介してくれないので、銀行口座や住所をお互いに伝えあい、「商品の発送と入金、どっちを先にする?」ということさえも、話し合って決めていた時代がありました。)
現在は恵まれた環境にあると言えますが、その反面、ネットを通じて物を買えなかった時代は、店舗に出向いて、現物を見て購入するしか手段はありませんでした。CDも例に漏れることなく同様でした。自分がよく通っていたのは、近所の『新星堂』さんでした。今の小規模なCD屋さんは、売上を確保する目的もあって、売れ筋の商品しか置かない為、どこも似たり寄ったりの品揃えですが、1990年代はCDバブルと呼ばれるだけあって、店舗に寄って特色が良く出たラインナップで構築されていました。「これは今後ブレイクするだろう」みたいなコーナーなども、店ごとに充実していましたし、今よりも『選ぶ楽しさ』はあった気がします。
ただやはり小規模な店舗となると、そこそこの売れ筋 or 予約購入が中心となる為、CDに対しての探求心を満たすことが出来ません。自分もアルバイトをするようになって、若干、CDにお金を割けるようになります。そこで自分の欲求を満たすべく、通いやすい範囲で大型のCD屋を探してみたのですが、そこで見つけたのが、大宮アルシェ内の5階にあった『DISC MAP』という、ソフマップ系列のCD屋さんでした。
ちなみに『DISC MAP 大宮店』は、1998年頃に閉店しました。(現在は『ソフマップ』が音楽小売専門事業から撤退している為、全店舗閉店しています。ちなみに跡地には、規模を縮小した形で『THE NACK5 TOWN』という、別資本のCD屋がオープン。2013年迄営業、閉店した後に更に売場を縮小した形で『HMV大宮』がオープン。2021年現在も営業は続いてはいますが、当初の敷地面積から考えると、かなり売場規模が縮小されています。)
『DISC MAP』の特徴としては、兎に角、在庫の数が多かった。大宮アルシェを訪れたことがある方であれば、イメージしやすいと思いますが、あの広大な敷地ワンフロアが全てCDショップでした。置いてないジャンルはないと言うほどに充実。洋邦問わずに、ロック、ポップス、ジャズ、R&B、ヒップホップ、メタル、トランス、ハードコア、EDM、インスト、サントラ、ワールドミュージック、クラシック、演歌、アニメ関連、インディーズまで、幅広く取り扱っていました。その上、新品に加えて、中古のソフトも販売。NACK5の公開放送用のラジオブースとイベントスペースも備えた、まさしく完全体とも呼べるCD屋さんでした。
自分にとっては、まるで豪華客船に乗っているような感覚。月に一度くらいのペースで、新しい音楽に浸る為にこの店を訪れました。そして1997年に堂島孝平さんの『トゥインクル』レコ発インストアイベントに参加したのもこちらのお店で、それが自分にとって生まれて初めて体感する、インストアライブにもなりました。
この規模のCDショップは、音楽ソフトの売上の衰退と共に、今でこそ少なくなりました。ただ自分にとっては、音楽への欲求を満たすために必要な探求心の原点であったので、このお店のことは、一生忘れることは出来ないと思います。